水の中に生きる藻類たちの世界をのぞいて生物の不思議を知る【グリーン環境創成科学科】

「藻類」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?そもそも、正しい読み方をご存知でしょうか。「藻類」と書いて「そうるい」と読みます。「もるい」ではありません。

 

これまで、多くの人にとって、藻類は馴染みのない生き物だったかもしれませんが、最近では、2025年の大阪・関西万博の日本館で藻類に焦点を当てた展示が行われたり、世界的にも藻類が関与する「ブルーカーボン」という概念が注目されたりしています。ブルーカーボンとは、水中に生息する光合成生物が吸収・固定する二酸化炭素のことを指します。湖沼や海洋に住む植物プランクトンや大型藻類(ワカメやコンブなど)がその主役です。

 

実は、現在の地球では、光合成で利用される二酸化炭素の総量は、水中の光合成生物と陸上植物とで同程度であることがわかっています。言い換えると、光合成の半分は藻類が担っていて、藻類の光合成は地球環境の維持に欠かせない存在です。藻類は数万種にも及ぶ多様な生物群であり(図1)、今もなお新種が発見され続けています。一方で、遺伝子やタンパク質レベルでのミクロな研究は十分に進んでおらず、いまなお多くの謎が残されています。

図1. 水の中に住む多様な藻類の顕微鏡写真

私たち生物機能開発学研究室では、水中に生きる藻類に注目し、特に「環境への適応メカニズム」に関する研究を行っています。自然界では、光の強さ、気温・水温、栄養(リンや窒素など)や化学物質の量など、環境要因が絶えず変化しています。こうした変化に対して、藻類がどのように適応しているのかを、遺伝子レベルで解明することを目指しています。

 

具体的には、自然環境から採取した藻類を含む多様な種を培養し、培養条件によって変化する遺伝子発現量やタンパク質の機能を、最先端の分子生物学的手法で解析しています。たとえば、PCR法や次世代シーケンスを用いて、特定の環境下で変化する遺伝子を調べます。また、タンパク質の機能変化については、古典的な生化学的手法に加え、2008年に下村博士がノーベル賞を受賞する契機となったGFPをはじめとした蛍光タンパク質を利用し、“生きた細胞内”でのタンパク質の振る舞いを直接観察します(図2)。

図2. 蛍光タンパク質を利用して生きた藻類の中でタンパク質の動きを観察します

さらに、藻類の光合成機能についても、葉緑体が持つ集光色素クロロフィルの特性を測定できる特殊な装置を用いて、環境変化に応じた光合成の様子をリアルタイムで観測しています。

 

このようにして、藻類が持つ光合成や環境変化に適応する仕組みを遺伝子・タンパク質レベルで明らかにすることで、将来的にはその仕組みを人工的に改変し、地球環境の保全や人類活動に貢献する生物の創出につなげることができます。

 

私たち生物機能開発学研究室では、未来の地球環境の保全に資する知見を得るため、藻類の生き様を深く理解する基礎研究に取り組んでいます。まだスタートして間もない研究室ではありますが、これからの研究成果を楽しみに見守っていただけますと幸いです。

AIイラスト. 藻類を使ったグリーンバイオ研究のイメージ

生物機能開発学研究室

得津 隆太郎